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◆売掛債権管理について知っておこう
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現金商売であれば、売上代金を取りはぐれるという問題は起こりません。
しかし、多くの商売では、得意先に商品を納入した後、1ヶ月分をまとめて請求し、代金を回収します。このような掛取引では、売掛債権を漏らさず回収するための管理が非常に重要です。
商品納入から代金支払まで、短い場合でも1ヶ月、長い場合では半年以上の期間を要することがあります。会社は様々な支払をしていかなくてはなりませんので、売上代金をきちんと決められたスケジュールどおりに回収することが欠かせません。
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◆まずは与信管理
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売掛債権管理の第一歩は、与信管理です。得意先に対して、掛取引で販売しても良いかどうかを判断しなくてはなりません。
新規の得意先が現れたときに、真っ先に行うのは、新しい得意先の財務情報の入手です。帝国データバンクや東京商工リサーチなどの信用調査会社からデーターを入手することができます。新しい得意先から直接決算書を入手すれば、コストもかからず直近の決算情報を入手できますが、これには先方の了解が必要ですので、双方の力関係から難しいこともあるでしょう。
新しい得意先の財務情報等から、回収に問題がないと考えられる売掛債権の限度額を定めます。これを与信限度額といいます。営業担当者は、得意先の希望通りの商品をいたずらに納入することは許されず、必ず与信限度額の範囲内に売掛債権の残高を抑えなくてはなりません。
財務情報等から信用力が低いと判断された得意先については、与信限度額を低く抑えることが必要です。取引開始から一定期間は現金取引や前払いを要求したり、保証金を預かることも効果的です。
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◆与信限度額は絶えず見直そう
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取引を開始した後も、各得意先への与信限度額は随時見直すことが必要です。
財務情報を適時入手し、回収に疑義が生じた得意先については、与信限度額を引下げることも必要です。
営業部門からは、取引量の増加してきた得意先について、与信限度額の引上げを要求されることが多くあります。 この場合、単に取引量が増加しているという理由だけで与信限度額を引上げることはできません。
得意先の信用力を客観的に判断し、回収可能と判断される与信限度額を設定しておきましょう。
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◆売上計上に漏れはないか?
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売掛債権管理の前提として、商品を納入したものについては、すべて売上が計上されていなくてはなりません。
経理処理について、売上計上は、原則として「商品を引き渡した時」又は「役務提供を完了した時」に行われます。
商品を引き渡した時として、通常は、自社の倉庫などから商品を出荷した時点を基準としています。
役務提供を完了した時としては、顧客から完成報告書などを受け取った時点を基準とするケースが多いようです。
いずれの場合も、出荷や完了というアクションが発生した場合に、漏れなく売上が計上される仕組みになっていなくてはなりません。売上計上の伝票処理は、ほとんどの場合、営業部門で行われます。経理部門では、営業部門から送られてきたデーターを処理して経理データーに落とし込む作業を行うだけですが、営業部門の業務フローが売上計上に漏れがないものになっていることを確認しておきましょう。
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◆1ヶ月に1度の請求を忘れない
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商品の出荷は毎日行われますが、請求は1ヶ月分をまとめて1枚の請求書で行います。
通常、得意先ごとに締め日と支払日とが決められています。支払に関してはお客様にイニシアチブがありますので、締め日と支払日は買い手の都合で決定されるケースが多いようです。
例えば、「毎月末締め・翌月末払い」の得意先については、毎月1日から末日までの売上伝票(出荷伝票)を集計し、合計額を記載した請求書を作成します。先方の支払事務のスケジュールも考慮して、できるだけ早く請求書を送付しなければなりません。
請求書作成・発送作業も、ほとんどの場合、営業部門で行われます。経理部門では、営業部門が行う請求業務フローが適時に漏れなく請求するものになっていることを確認しておきましょう。
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◆得意先からの入金を確認する
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売掛債権は、1.集金による現金・手形の回収による場合、2.郵送による現金・手形の回収による場合、3.得意先からの振込による場合等があります。
売掛債権を回収した場合には、得意先ごとの売掛金を管理する得意先元帳に入金があったことを記録します。
それぞれの入金が、どの得意先からの、どの請求にかかるものであるかを1件ずつ把握しながら、未回収の売掛債権を消し込んでいきます。
小規模な会社や、得意先の数が少ない会社ですと、この消し込み作業は手作業で行います。
しかし、得意先が何千件、何万件とあるような会社で、銀行預金口座に振り込まれてくる場合には、コンピューターで自動的に処理をします。その場合、請求書に連番を付し、振込入金データー上の請求書番号と突合する作業を自動的に行います。
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◆期日どおりの入金がない場合には督促する
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売掛金の消し込み作業は毎日行います。
なぜなら、期日どおりに支払いをしてくれない得意先があるからです。
売掛金の消し込みを日々行うことで、期日を過ぎても支払いがない得意先を早期に識別できます。
支払期日を過ぎても回収できない売掛債権については、督促しなくてはなりません。督促は営業部門の担当者が行うことが一般的です。経理部門で売掛債権の消し込みを行っている場合には、未回収売掛金のデーターを営業部門に提供し、督促を依頼しなくてはなりません。
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◆滞留状況をチェックする
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少なくとも1ヶ月に1度は、売掛債権の滞留状況をチェックします。
滞留状況を把握するために、「売掛金年齢調」を作成します。
売掛金年齢調により、得意先ごとに売掛債権の回収遅延の状況を把握します。
売掛債権の回収遅延については、営業部門と経理部門とで情報を共有することが必要です。回収の見込みは期末の貸倒引当金の設定に影響を与えますし、資金繰りの手当てが必要になる場合もあるためです。
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◆売上値引・返品・割戻の注意点
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売上値引という言葉は日常的に用いられますが、本来の意味とは異なるようです。売上値引は、得意先に対して値段を安くするオマケのことではありません。
正しくは、「納品時の数量不足、品質不良、破損等の理由により売上代金を減額すること」です。
ところで、この売上値引は、得意先から営業担当者にクレームとして連絡・要請があるものですが、営業部門でその計上についてチェックが正しく行われているかどうかを経理部門としても気にかけておく必要があります。
なぜなら、売上値引は商品が会社に戻ることもありませんし、事前の取り決めによるものでもありません。得意先からの連絡を受けて、営業担当者が伝票処理するだけで売掛債権が減少します。
そのため、営業担当者が得意先と結託し、会社の商品を非常に安い価格で払い出すといった不正が発生する可能性があるのです。
売上返品とは、文字通り得意先から商品が送り返されることをいいます。こちらについては、返品された商品を確かめ、入庫処理を行った上で、売上を減ずる経理処理を行います。
売上割戻とは、いわゆるリベートのことをいいます。
一定の期間に、事前に取り決めた数量又は金額を上回る取引があった得意先に対して、一定の金額を支払います。多くは売掛金を減じる経理処理を行います。
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◆残高確認を実施する
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売掛債権が会社の帳簿上正しく計上されていることを確かめる目的で、残高確認を実施することも効果的です。
売掛金の残高確認とは、得意先に対して、残高確認書を郵送し、会社が売掛債権として認識している金額と、得意先が債務として認識している金額とが一致していることを確かめ手続きをいいます。
会社が売掛債権として認識している金額と、得意先が債務として認識している金額が一致していない場合には、その原因を分析します。
残高確認を実施することで、売掛金残高の異常を把握することができます。例えば、入金の処理漏れや売上の二重計上などが発見されます。それ以外に、営業マンが架空売上を計上しているような不正の発見にも効果を発揮します。
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